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イワンの馬鹿

公開日:2016.10.23
更新日:

ポスクロでトルストイの家の写真の絵はがきを貰ったことをきっかけに、青空文庫から「イワンの馬鹿」を読んでみました。

Book Data

青空文庫 作品名:イワンの馬鹿
著者:レフ・トルストイ
翻訳者:菊池 寛
舞台:ロシア
青空文庫 図書カード:42941

青空文庫
作品名:イワンの馬鹿
著者:レフ・トルストイ
翻訳者:菊池 寛
舞台:ロシア
青空文庫 図書カード:42941

概要

ネタバレあり

 農家の三男で、農作業をすることしか頭にないイワンと、彼を困らせようとする悪魔のお話です。

 イワンの二人の兄は兵隊と商人として独り立ちしているのですが、その二人が度々悪魔に負ける一方、イワンは悪魔の企みなんて何のその、ひたすら働きます。

 金の無心に来た兄たちに、簡単に金を渡すイワン。
 金でもめると思っていた悪魔はおもしろくありません。そこで、手下の小悪魔に三兄弟を破滅させるよう命じます。
 兵隊の兄は大口を叩いた遠征先でこっぴどくやられ、商人の兄は借金で首が回らなくなりイワンの所へ帰ってきます。
 イワンは小悪魔に農作業を邪魔されつつも、思いがけず撃退し、逆に病気を治す薬、藁から兵隊を作る術、樫の葉から小判を作る術を得ます。

 兵隊の兄はイワンから藁の兵隊を貰い、なんだかんだで国王にまで上り詰めますが、悪魔の悪巧みにはまり、戦で負けて命からがら逃げるしかありませんでした。
 商人の兄もなんだかんだで王になりましたが、こちらも悪魔の企みにより、金があっても売ってくれる人がいなくて飢えるしかなくなりました。

 イワンもなんだかんだで王様になりますが、頭の良い国民には逃げられて、みんながせっせと働くような国になりました。
 他国から攻められてもされるがままで、攻める側の兵隊が嫌になって逃げる始末。
 悪魔が金で買い占めようとしても、金の価値がなく何もできない始末。
 悪魔が「頭を使って働く」と演説をするものの、イワンの国の民は興味を持たず。最後には階段から落ちて地面に開いた穴の中へ。

思考

ネタバレあり

 まじめに働きなさい。という話ではないと思います。
 悪魔にしてやられてしまった兄たちだって、それぞれの方法できちんと働いて、その上で王様にまでなったわけですし。
 軍事よりも商業よりも農業だというわけでもないと。
 分相応に生きろということかと。

 さて、私が悪魔でイワンを困らせてやるなら、ということを考えてみました。

 一つ目、国民全員を病気にしてしまう。
 これは、最初の小悪魔がイワンに使った方法です。イワン並みに働くことしか頭にないと、多少の体調不良では働いてしまうのですが。
 ただ、悪魔が最初の小悪魔の方法をやってみなかったというのは謎ですね。

 二つ目、許容量以上の働かない人を養わせる。
 イワンは何でも「いいとも、いいとも」と受け入れてしまいますし、どのくらいまでなら養えるかの計算なんてしないでしょうから。
 国全体が飢えてしまう方に行くのではないかと。

 三つ目、働いた結果を無にする。
 兄たちへの仕打ちは要はこれだと思うのです。
 ただ、イワンには実った畑を焼き払うとか、育てた家畜を殺すとか、天気を雨ばかりにするとかしないといけなかっただけで。

 問題は、ここまでの方法は国民に多大な影響が出るんですよね。
 悪魔が困らせたいのがイワンだけであれば、さすがにできない方法です。
 兵隊の兄は兵士が巻き込まれてしまっていますが、それでも兵士だけですから。

 そこで四つ目、働く必要をなくさせる。
 周りから見れば、働かずともいい生活をできる環境ですが、先代の王が死んだ時にさっさと農作業に戻ってしまったイワンにとっては、地味にきついかと。
 畑を耕そうと畑へ行けば、既にきっちり耕されてる。収穫しようと思えば、終わっている。そんな状況です。

 ただし、悪魔は多少の不思議なことはできても、何でも魔法でできるというわけではないようですので、働くのが嫌いな悪魔には無理な芸当なのですが。